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「札幌・中島スポーツセンター別館跡地」 (2000-2-13)

すすきのの外れに白樺の林、そこは中島公園。

■JR札幌駅から駅前通をまっすぐに歩く。大通公園を越えると、すすきのの繁華街に入る。大柄な造りの街並みは、目当ての店なしに、ぶらぶらと歩くだけでも楽しい。そして、すすきのの外れまで来ると、そこにあるのが中島公園である。

■中島公園。昭和を過ごしたレスリングファンならば、誰でもその名を知っているであろう中島スポーツセンター別館が、ここにあった。レスリング会場としての中島スポーツセンター別館が持つ”格”は高い。しばしばビックマッチが組まれたその会場は、僕にとって一度は訪れてみたいものの一つだった。

■僕が初めて中島スポーツセンター別館に足を運んだのは、1991年11月10日。SWSマットで復活なった阿修羅原と、この直後に行われる東京ドーム大会でハルク・ホーガンとの対戦を控えた天龍源一郎のシングル対決が実現。この報を聞き、思い切って札幌へと飛んだ。

■今でこそ、航空運賃の低廉化が進み、正規の窓口で様々な割引制度を利用できるようになっているが、当時は少しでも安価に航空機を利用しようと思うと、市中の金券屋で安いチケットを探さねばならなかった。そのため僕は、今では新宿駅東南口広場として整地されてしまってた土手(その根方にはちょっと入ることを躊躇するような見た目の台北飯店があった)の上にあった金券屋で他人名義の格安チケットを手に入れて出かけた。周りには「事故があったら、○○(そのチケットの名義は忘れてしまった)と言う名前でテレビに出ますから」と触れ回っていた記憶がある。僕にとってまだまだ飛行機に乗って出かけることが”非日常”なことであった頃の話だ。

■そうしてたどり着いた中島スポーツセンター別館は見た目は千葉公園体育館と似た感じの古びたそれで、また観客動員もあまり良くなく(僕の席は2階特別席だったのだが、”特別”ゆえの配慮か、二人分の座席を一人で使えるように設定されていた。そんな程度の動員だったのだ)、「ふーん」と言う感じもしないではなかった。が、大会終了後には、その晩に見せつけられた激しい試合内容と、あの中島で試合を見たんだという充足感に満たされてすっかり上気してすすきのの”つぼ八”(チェーン店の”つぼ八”を選ぶあたりに見知らぬ土地での小心さが伺えるが)で一人、生ビールを飲み干していたのだった。

■その中島スポーツセンター別館が今はもうなく、建物も取り壊され、すっかり整地されてしまっていることは週刊のレスリング雑誌などでの報道で知ってはいたが、今回の月寒グリーンドーム遠征の合間に、あえて足を運んでみた。

■真冬の公園内は一面の雪景色。すっかり除雪されていた札幌中心部に、少々物足りなさを感じていた僕にとって、ようやく北国へ来たことを実感させてくれる光景に出会えた気がする。大きな池も、雪の下。いったいどのくらいの氷が張っているのだろうか。

■雪深い園内には、 歩くスキーの常設コースがあり多くの市民が歩くスキーを楽しんでいる。と、言うよりもあらかじめ除雪された歩道以外の場所は、スキーでも履かないと歩けないのである。試しに、雪の中へ足を踏み入れてみたのだが、スボズボと腰まではまりこんでしまい、ウルトラアイを探すモロボシダンのごとくラッセルを余儀なくされてしまった。中島公園、安易な気持ちで歩いてはいけない(笑)。

■地図を見てもわかるように、体育館は中島公園の中では一番すすきの側から遠いところにある。雪の中をぐるっと回り込んで、スポーツセンターの裏側にたどり着いた。意外だったが、事務所棟(スポーツセンター)は閉鎖されていたものの残されていた。しかし、その向かいにあったはずのあの体育館は、やはりない。

■体育館のあった場所は、整地された上に、厚く雪が積もり、なにも痕跡を見ることはできなかった。その広くあいた空間が、あの体育館のスケールと微妙な喰い違いを僕に感じさせたが、今ではそれを検証することもできない。

■ここでジャイアント馬場が最後の32文人間ロケット砲を天龍源一郎に放ち、天龍源一郎はジャイアント馬場をパワーボムで脳天逆落としにし、ミスターポーゴは武井さんに灯油を浴びせかけ、……。あれもこれもと思い起こされる。世間一般にはただ単なる町外れの空き地にすぎないこの場所も、レスリングファンという種族にとってはかけがえのない、ただ一つの極北にある強者どもの夢の跡である。

■この極北の夢の跡の、ちょうどそこにリングがあったところに歩を進め、そこで大の字に寝そべってみようと思っていたのだが、簡素とは言え立ち入り止めのロープが巡らせてあったし、また雪の深さを手数に思い、それをしないで帰ってきてしまったのだが、なぜそうしなかったのだろうと今になって悔やんでいるところではある。

▲すすきのの外れに白樺の林、そこは札幌中島公園。
公園の中心にある池も、すっかり雪に覆われる真冬2月。
▲公園の中心にある池も、すっかり雪に覆われる真冬2月。
中島公園には”歩くスキー”の常設コースがあり、市民が歩くスキーを楽しんでいる。
▲中島公園には”歩くスキー”の常設コースがあり、市民が歩くスキーを楽しんでいる。
中島公園の地図にはまだスポーツセンターの記載が残されている。
▲中島公園の地図にはまだスポーツセンターと体育館の記載が残されている。
スポーツセンターの建物は閉鎖こそされていたが、残されていた。
▲スポーツセンター事務所の建物は閉鎖こそされていたが、残されていた。
しかし、体育館はやはりない。更地に雪が積もるのみ。
▲しかし、体育館はやはりない。更地に雪が積もるのみ。
反対側から見た体育館跡。利用計画はあるのだろうか。
▲反対側から見た体育館跡。利用計画はあるのだろうか。